優勝までのマジックが1となった昨日、朝から仕事が何だか手に付かず、夕方、気が付いたら電車に乗って東京ドームに向かっていました。もちろん、チケットを持っているわけでもなく、指定席は完売で、入場出来ない可能性の方が高かったのですが、行かずに後悔したくなかったのです。「東京ドーム周辺の空気を吸えるだけでもいい!」とさえ思っていました。「この歳になって、急にこんな気持ちになるのはなぜだろう?」と、自分でも不思議でした。
確かに、子供の頃は、野球少年で、ジャイアンツ、特に長嶋さん王さんに憧れ、後楽園や多摩川の練習場にまで夢中になって見に行っていましたし、練習場近くの長嶋さん宅までサインをもらいに行ったこともありました。今でも鮮明に覚えていますが、ボクが10歳の時に、インターホーン越しに「サインを下さい!」と言いますと「白雪姫のように美しい」亜希子夫人が出て来て下さり、ニコニコ笑顔で「どこから来たの?ちょっと待っててね。」と言って、ボクが差し出したボールや色紙に、家の中にいる長嶋選手のサインをもらって来て下さったのです。その時は、本当に夢心地でした。
それから20年経ち、出張料理人として独立しましたが「いつの日にか、長嶋さんにボクの料理を食べて頂くこと」が夢でした。そんなの絶対に無理だろうなと思っていましたら、5年後にある方の御紹介で、御食事会が実現したのです。亜希子夫人は、とても喜んで下さり、「あなたは、どこにでも行ってお料理し、とても良い経験をしているわね。これからも、自信を持って頑張りなさい。」と激励して下さいました。
それから何度か、御手紙も頂き、数年前に次男の正興さんが「カフェレストランをやりたい。」とおっしゃった時には、亜希子夫人から、真っ先に「指導してもらえますか?」とご依頼頂きましたし、ご病気の事も知っていましたが、いつも明るく御元気でしたので、先月、急死の報を受けた時には、とてもショックでした。そんなこともあり、昨日の優勝は、天国の亜希子夫人と共に、自分の目に焼き付けたかったのです。身動き取れない状態での4時間の立ち見はきつかったですが、感動のクライマックスでした。ご冥福を御祈り致します。