「ハモン・イベリコ」とは、どんぐりを食べさせたイベリコ豚(黒豚)を使い、熟練した製法と2年以上の長期熟成により作り上げられた、薫り高い最高級の生ハムのことですが、スペイン国内では、年間3000万本以上の生ハムが生産される中で、「ハモン・イベリコ」の最高級品は66.8万本、つまり、手間ひまが非常にかかるために、全生ハム生産量のわずか2.2%しか作ることが出来ないのです。
生産の工程は「塩漬け」「洗浄」「乾燥」「乾燥地下室での熟成」の4つに分けられますが、「乾燥」と「熟成」を標高800m以上の高地で、完全に自然に任せて行われており、熟練された職人でなければ管理が出来ないものですから、「ハモン・イベリコ」は、オリーブオイルと並んで、まさに「スローフード」の典型だと思います。「何でも、良い物を作るには、手間と時間がかかる」これは、揺ぎ無き「自然の摂理」だということが、スペインを訪れる度によく理解出来ます。
ところで「ハモン・イベリコ」の脂肪分は、59%という高い割合でオレイン酸を含有しており、脂肪の組成上では、オリーブオイルにとてもよく似ています。このことからも、「ハモン・イベリコ」が、食べた瞬間に口の中で溶ける理由がよく分かります。「自然に逆らわないスローフードは、体にも優しい」のですね。
まだ日差しの強い午後、セビリアのバールで地元名産の「シェリー酒」の香りを楽しみながら、スライスしたバケットに地元産のオリーブオイルをかけ、「ハモン・イベリコ」を載せて食べてみました。まさしく、「地産地消」の極み、最高の取り合わせに時間がゆっくりと流れて行きました。