今まで、世界70ヶ国以上を、料理指導の仕事や食文化の取材で訪れましたが、旅先では必ず、どんなに遠い不便な所にあろうとも、その土地の市場を自分の足で歩いてみます。その理由は、市場に来る人々の姿や雰囲気、店先に並んでいる食材を自分の目で確かめることで、その国の食文化はもちろんのこと、それらを取り巻く様々な状況が鮮明に見えてくるからです。
最近は、情報化社会で、何でもすぐに調べれば分かる、とても便利な時代になりましたが、「知らない人には、時間をかけて直接お会いし、話さなければ分からないことが多い」と思いますし「知らない場所には、自分から訪れて、苦労しながら自分の足で歩かなければ本質は見えてこない」というのが、私の、世界を回って得た教訓です。
こんな時代だからこそ「一見、無駄だと思えるような事」や「ハートの部分」を大切にしなければいけないような気が致しますが、皆様はどう思われますでしょうか?
世界の市場を回るのは、本当に楽しいです。「食材の持つ力強さ、自然の色彩の美しさ」に惹かれ、いつも夢中で写真を撮ってしまいますが、シシリア・パレルモの市場でもかなりの枚数をカメラに収めました。「パレルモには、何度も来ているにも関わらずに」です(笑)
たくさんある素晴らしい食材の中で、シシリアにいつ来ても、何度来ても「魅力的で美しい」と思う食材を、いくつかご紹介させて頂きます。
まずは、「ニンニク」です。種類はいくつかあるのですが、写真の「皮が赤味を帯びた物」が、甘味・コクがあって、私は好きです。
そして、「トマト」と「唐辛子」ですが、これらも、実にたくさんの種類、大きさがあり、料理や嗜好によって使い分けるのですが、共通していることはただひとつ、「オリーブオイルと相性が抜群に良い」ということです。
搾り立ての香り高いオイルを中火に保ちながら、ニンニクと唐辛子でゆっくりと香りを付け、粗刻みしたトマトを加えて軽く煮込んだトマトソースの美味しさは「シシリアならではの物」だと思います。
その美味しいトマトソースに、「香ばしく焼いたナス」を加えたパスタを「シシリア風」と言いますが、その理由も、市場を歩きますと、よく分かります。実に多くの瑞々しいナスを見かけますが、とりわけ大きな、ソフトボールをさらに大きくした位のナスで作った「シシリア風パスタ」は、毎日食べても飽きないくらいに美味しい定番料理のひとつです。素晴らしい「地産地消」の郷土料理だと思います。