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2010年06月 アーカイブ

2010年06月04日

「情熱大陸」回想録 <イタリア・シシリアの市場>編

「情熱大陸」では、私が南イタリア・シシリアの青空市場で、夢中になって食材探しをしているシーンが紹介されました。
旧市街の入り組んだ路地の奥の方にあります、歴史のある「バラッロ青空市場」は、いつも朝から大勢の買い物客で賑わっておりまして、私は、その雑踏が醸し出す、人間臭い雰囲気が大好きなのです(笑)。
今まで、世界70ヵ国以上を訪れ、オリーブオイルを中心とした、世界中の食文化の研究をしておりますが、訪れた初日には、必ず、現地の市場を端から端まで、くまなく歩き回るようにしています。
市場を見れば、その国の食文化はもちろんのこと、経済情勢や諸々のことが、とてもよく分かるからです。
たとえ、言葉の通じない国に行ったとしましも、包み隠すことのない庶民の生き様、表情を見ていれば、言葉以上に伝わってくるものがあります。
実は、肌で感じる、その感覚が、一番大切なのではないかと、最近、強く思います。「これからは感性の時代だ」と思うのは、私だけでしょうか。
南イタリア、特に、シシリアでは、とても新鮮で、生命力に溢れた食材が豊富にあります。
そのいくつかを、写真で御紹介させて頂きます。


歴史と雰囲気のある「バラッロ市場」です。

ナスやズッキーニからも、「生命力に溢れたエネルギー」を感じます。

日本では珍しい「白ズッキーニ」も、規格はずれの大きさです。

特大サイズの「カリフラワー」は、トラックの特設屋台で売られていました。

トマトも、多種類あり、彩りもとても美しいです。

シシリアは、とても美味しいフルーツの宝庫でもあります。

2010年06月13日

「情熱大陸」回想録 <シシリア・ラビダ農園で仕込み>編

「情熱大陸」では、南イタリア・シシリアの名門オリーブ農園「ラビダ家」のヴィッラ(築200年以上のお城)のキッチンをお借りして、翌日に迫ったホームパーティーの仕込みを、額に汗しながら、徹夜でするシーンが紹介されました。
日本からは、伝統的な和の食材や調味料(玄米・昆布・鰹節・醤油・味醂・日本酒・本ワサビ・柚子胡椒・白ゴマなど)もスーツケースに入れて持参し、まずは、鰹節と昆布で「和風出汁」を引くところから、仕込みはスタート致しました。
日本からの素材ではありますが、水も日本からというわけにはいきませんので、水は、地元のミネラルウォーターを使わせて頂きましたが、イタリアの水は石灰分を含む硬水ですので、出汁も微妙に味わいが異なり、微調整するのに、とても苦労致しました(笑)。
一口大にカットして、歯応え良くボイルした、彩りの美しい各種野菜には、その苦労して引いた和風出汁を加えて、半日ほど漬け込んだのですが、野菜の種類・持ち味に応じて、和風出汁の味加減も少しづつ変化させましたので、広い調理台の上には、和風出汁と野菜の入った20個位のお鍋やボールが、所狭しと並び、その迫力あるシーンも、しっかりと映し出されておりました。
「ラビダ家」には、料理が大好きで、撮影中も、ぴったりと私の側から離れずに、楽しそうに仕込みを手伝って下さった、10才になる息子さんがいらっしゃいます。
お刺身サラダ(ワサビ醤油風味のカルパッチョ)用に、新鮮な黒鯛を仕入れたのですが、その下拵えも息子さんに手ほどきしながら、手伝って頂きました。
私が、簡単に説明しますと、すぐに上手に捌けるようになったのには、驚きましたが(笑)、「好きこそ物の上手なれ」なのですね。感心致しました(笑)。
3枚卸しにした黒鯛の身は、昆布とオリーブオイルで3時間ほど、マリネしたのですが、これが、普通の昆布〆よりも遥かに美味しく、「和と洋のコンビネーションの妙」に、とても感動致しました。
デザートは、一切の砂糖を使わずに、少しの塩とオリーブオイルだけまぶして焼いたリンゴと柿(イタリア語でも柿は「カキ」です)のグラタンにしたのですが、この焼きリンゴが、本当に甘くて美味しく、撮影スタッフのみなさんにも大好評でした。
ここまで、仕込みは、ほぼ完璧に出来ましたので、翌日の御食事会本番が、楽しみになってきました。
(実は、翌日、予想外のアクシデントが起きるのですが・・・。)


日本から持参した「和の調味料・食材」の数々です。

ラビダ家の10才になる息子さんにもお手伝いして頂きました。

前日の仕込みは、徹夜作業になりましたが、楽しかったです。

お刺身用の黒鯛は、昆布とオリーブオイルでマリネしました。

歯応えを残してボイルし、和風出汁に浸けておいた、彩り良い野菜の数々です。

リンゴは、少しの塩とオリーブオイルをまぶして焼きました。

2010年06月21日

信濃毎日新聞・洋食の定番 (6月) 「信州サーモンのカルパッチョ」

信濃毎日新聞で、毎月、好評連載中の「コグレ流・洋食の定番」6月のメニューは、「信州サーモンのカルパッチョ」です。
とても簡単に出来て、美味しい御料理ですので、是非、皆様もお試し下さい。
今月も、私が書きましたエッセーとレシピを御紹介させて頂きます。
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今月のメニューは「信州サーモンのカルパッチョ」です。
6月も半ばを過ぎますと、蒸し暑さで、食欲のわかない日もあるかと思いますが、そんな時に、サッパリと食べられて、お勧めなのが、今回のメニューです。
「カルパッチョ」は、イタリア料理の代表的な前菜のひとつですが、日本語に訳しますと「オリーブオイルをかけたお刺身」と言ったところでしょうか。
本来、「カルパッチョ」とは、ビーフや鹿肉等、赤身のお肉を生の状態で薄切りし、軽く塩・胡椒を振ってから、オリーブオイルをかけて食べる、素朴な家庭料理でした。
実際に、今から25年前の私の修行時代には、イタリアのどこの地方を訪れても、「カルパッチョ」と言えば、「お肉」でしたが、最近では、白身魚やマグロ等のお刺身を使った、ヘルシーな「シーフードのカルパッチョ」が、欧米諸国で大人気です。
「なぜ、このような流れになって来たのか?」と申しますと、実は、「日本のお刺身文化」の影響が、かなりあるのです。
交通の便が良くなり、情報網も広がって「食の文化交流」が進んできますと、「ヘルシーな日本の食文化」に興味を持ったシェフ達が、世界中から訪れるようになります。
特に「会席料理の繊細で芸術的な盛り付け」や、「職人技が冴える寿司」等は、欧米から来たシェフ達には、とても新鮮なようで、その美味しさ、技を脳裏に焼き付けて帰国すると、自分達のレストランで、早速、再現してみます。
昔と違い、どんなに内陸部であろうとも、その日のうちに新鮮な魚介類が手に入るようになり、「シーフードカルパッチョ」も、簡単に美味しく出来るわけですから、当然、刺身に違和感の無いお客様の反応も良く、今や「日本から逆輸出したメニュー」が、欧米諸国の「看板メニュー」になっているのです(笑)。
今回は、以前から使ってみたいと思っていました「信州サーモン」のカルパッチョです。皆様は、「信州サーモン」を食べたことがありますでしょうか?
長野県の水産試験場が、約10年の歳月をかけて開発したと聞いていますが、美しい紅色でキメの細かい肉厚な身は、サーモン独特のクセがまったく無く、程よく脂も乗っていますので、お刺身にしますと、とろけるような美味しさに驚きます(笑)。
今回のレシピでは、サーモンの美味しさを生かすために、ドレッシングソースはシンプルに致しましたが、お好みでワサビや卸し生姜、ゆず胡椒等を適宜、加えて頂いても結構です。
ここで、ポイントがひとつだけあります。ソースをかける前に必ず、お刺身に塩・胡椒を軽く振って下さい。こうすることで、お刺身とソースの味の馴染みが良くなり、美味しさが引き立ちます。これは、他のお刺身を使う場合でも同じことですので、是非、皆様も色々とお試し下さい。
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<材料・2人前>
(A)
・信州サーモン(刺身用)      150g前後
・塩、胡椒             各少々
(B)
・オリーブオイル          大さじ2杯
・醤油               大さじ1/2杯
・レモン汁              少々
(C)
・プチトマト            6個
・万能葱(小口切り)        大さじ1杯
・白炒りゴマ            少々


<作り方>
①サーモンはスライスして、皿に盛り、軽く、塩、胡椒を振っておく。
②(B)を合わせたソースをかける。
③カットしたプチトマト、万能葱、白炒りゴマを盛る。


サッパリとしていて、美味しい「信州サーモン」のカルパッチョです。

お刺身は、スライスして、広げるようにお皿に盛ります。

ソースをかける前に塩を振っておくのがポイントです。

塩は、上質な天然塩を使うと、美味しさがアップ致します。

夏場で、食欲が無い時にもお薦めの1品です。


2010年06月22日

「情熱大陸」回想録 <シシリア・ラビダ農園で出張料理>編 (1)

徹夜で仕込みを間に合わせ、いよいよ出張料理当日です。
まずは、テーブルセッティングから始めましたが、ラビダ家に古くから伝わる、シシリアの伝統的な陶器の飾り皿を中心に置きまして、シンプルなテーブルコーディネートを心がけました。
メニューもイタリア語とフランス語を交えて、手書き致しましたが、睡眠不足で、頭がボーッとしていましたので、スペールが正しかったか、どうかは、よく分かりませんでした(笑)。
キッチンでは、初日から懐いてくれていた、10才になる息子さんが、私の隣で、一生懸命に盛り付けを手伝ってくれたのですが、撮影が始まり、カメラマンさんから、離れて着席するように言われますと、とても悲しそうな表情をしていたのが、印象的でした。
彼は、将来、料理の道に進めば、きっと一流のシェフになれるだろうと確信していますが、何しろ、貴族のひとり息子さんですから、そうも行かず、いずれは、シシリアの社交界を背負って立つ、立派な人物になるのだろうな、と秘かに想いを巡らせたりもしました。
1品目の前菜は「野菜と天然海老の和風マリネ、搾り立てオイルとゴマソースの2色仕立て」でしたが、ここで、思わぬハプニングに遭遇致しました。
各野菜は、それぞれの歯応え、美味しさを味わって頂けるように、細心の注意を払いながら、ボイルし、一晩、和風の出汁に浸けておいた「自信作」なのですが、何と、7名様中4名の方が、殆ど手を付けずに残されたのです。
今まで、20年近く出張料理を続けて来ましたが、こんなに残されたのは、初めてでしたので、本当に驚きました。思わず、撮影をストップさせようかと思ったくらい、びっくり致しました。
南イタリア、特に、シシリアの料理は、野菜を何でもクタクタに煮込む傾向が強くて、せっかく美味しい素材の味を台無しにしているような気がしていましたので、今回は、あえて、コグレ流の野菜料理で、その美味しさに気付いて欲しいと思っていたのですが、結果は、御覧の通り、そう甘くはありませんでした(笑)。
異国の長きに渡る食文化を変えることは、そう簡単ではないことを、改めて実感致しましたが、野菜料理に自信はありましたので、正直なところ、ショックも大きかったです(笑)。
今回は、コース仕立てで、2品目をすぐに出さなければいけませんでしたので、「反省」は、一瞬にして、次の「黒鯛のお刺身サラダ、ワサビ醤油風味の搾り立てオイルかけ」の盛り付けに全力を注ぎましたが、撮影をこのまま続けて良いものなのか、心は大きく揺らぎ、内心は、かなり半信半疑でした。


シンプルなテーブルコーディネートを心掛けました。

イタリア語とフランス語を交えた、手書きのメニューです。

息子さんも、プレゼントした帽子をかぶり、一生懸命にお手伝いしてくれました。

ラビダファミリーが集まった、和やかな雰囲気の御食事会でした。

手間暇かけて、野菜の歯応えと旨味を生かした1品なのですが・・・。

2010年06月23日

「情熱大陸」回想録 <シシリア・ラビダ農園で出張料理>編 (2)

コグレ流の、野菜の美味しい歯応えを伝えたかった「自信作の前菜」で、いきなりつまずき、「こんな間抜けなところを全国放送されてしまったら、私の料理人人生も終わりだな!」とか、様々な感情が込み上げてくるなかで、カメラの前では、冷静を装いながら、2品目の「黒鯛のカルパッチョ、ワサビ醤油風味のオリーブオイルソースかけ」を仕上げていきました。
「昆布締め」にオリーブオイルを使うシェフは、おそらく、私くらいだと思うのですが、これが、本当に美味しいのです(笑)。
不思議なもので、美味しい物(黒鯛の昆布&オリーブオイル締め)を一口食べますと、それまで落ち込んでいても、気持ちが段々、前向きになってくるんですよね(笑)。「命ある食べ物のパワー」は、凄いと思いました。
静岡県産の大きな本ワサビを、築地の道具屋さんで仕入れた鮫皮ですり卸し、ワサビ醤油を作ってから、搾り立てのオリーブオイルと混ぜれば、ドレッシングソースの出来上がりなのですが、昆布&オリーブオイル締めした黒鯛との相性は最高で、「これなら大丈夫だろう!」と祈るような気持ちで、食卓を覗きますと、全員がアッという間に完食して下さっており、私とみなさんの目が合うやいなや、「ミスターコグレ、ファンタスティック!」とか「ブラボー!」といった絶賛の声が上がり、ホッと致しました(笑)。
「命のある食材」は、いつも私を裏切らずに、こうして助けてくれるのです。「命のある食材に、感謝、感謝」ですね。
3品目には、「地元野菜とハーブがたっぷりと入ったムール貝の和風コンソメスープ」をお出ししたのですが、野菜は、少し軟らかめに煮まして、仕上げに搾り立ての濃厚なオリーブオイルを回しかけますと、香りとコクが一気に際立ち、極上のスープが完成致しました(笑)。
このスープも、みなさんに完食して頂けたのですが、特に、最初の前菜を残された御老人が、最後の一滴まで、パンに浸けて食べて下さったのには、感激致しました。
これだから、出張料理人は、辞められませんよね(笑)。


ワサビ醤油とオリーブオイルの相性が最高の「黒鯛のカルパッチョ」です。

「黒鯛のカルパッチョ」は、全員がアッという間に完食して下さいました。

仕上げに加えるオリーブオイルが決め手の「和風コンソメスープ」です。

2010年06月26日

「情熱大陸」回想録 <シシリア・ラビダ農園で出張料理>編 (3)

コース仕立ての御料理は、前菜2品、スープと進み、次は、メインディッシュの「地鶏のソテー、柚子胡椒風味の搾り立てオリーブオイルソース添え」です。
付け合せの野菜は、1品目と同じように、彩り良く、歯応えを残して、出汁の旨味を浸み込ませた物にする予定だったのですが、それでは、また、残される可能性を肌で感じましたので、急遽、オリーブオイルで柔らかく素揚げしてお出しすることに致しました。
番組内では、額に大粒の汗を浮かばせながら、フライパンでブロッコリーを素揚げしているシーンが紹介されましたが、このあたりでは、全神経をブロッコリーに集中させており、カメラがあることさえ忘れて、調理に没頭しておりました(笑)。
その他、シシリア産の大きなナスも、素揚げして、香ばしく色付けましたし、日本から持参した、玄米のこしひかりは、オリーブオイルとバルサミコ酢を入れて、お鍋で炊き、野菜や豆を加えて、サラダ風に仕上げました。
この、急遽、調理法を変えたメインディッシュも、全員の皆様に完食して頂き、やっと、肩の荷が降りた気が致しました。
最後のデザートでは、リンゴに一切の砂糖を使わずに、軽く塩を振りかけ、オリーブオイルを馴染ませてオーブンで焼いた物と、完熟した柿をグラタン仕立てにしたのですが、これも、大好評で、息子さんは、「おかわり」までしてくれました(笑)。
すべてのコース料理を出し終え、客席に伺って、なぜ、1品目の野菜を残されたのか、ニューヨークから来て下さった、高齢の御夫妻にお伺いしてみました。このシーンも番組内で紹介されましたが、やはり、柔らか目の方がお好きだとのこと。体調も万全ではなかったようです。
予想はしておりましたが、理由をお聞き出来て、スッキリ致しました(笑)。
今回も、壁にぶち当たりながら、何とか乗り越えて行くという、貴重な経験をさせて頂くことが出来ました。
この経験を大きな財産として、今後に生かして行きたいとは思いますが、「南イタリアのみなさんに野菜本来の美味しい食べ方を伝えたい」という、熱い気持ちに変わりはありませんので、これからも地道に、壁にぶち当たることを恐れずに、頑張りたいと思っております。
皆様も、応援を、どうぞ宜しくお願い致します(笑)。



急遽、料理法を変えた「地鶏のソテー、柚子胡椒風味のオリーブオイルソース」です。

料理法を変えたメインディッシュは、全員に完食して頂きました。

デザートは「焼きリンゴと柿のグラタン仕立て」、オリーブオイルが決め手です。

御食事会のお礼に、貴重な「手書きの絵画」を頂きました。

息子さんには、一生懸命に楽器の演奏をして頂き、感激致しました。


2010年06月27日

「情熱大陸」回想録 <学校給食のメニュー開発>編 (1)

「情熱大陸」の後半では、千葉県南房総市の岩井小学校で、学校給食のメニュー開発に携わるシーンが紹介されました。
私は、2007年より、南房総市の「食育推進委員」に任命して頂きまして、そのご縁から、南房総市には、定期的に伺い、講演会や料理教室等をさせて頂いております。
(詳しくは、ブログ内「食育・講演活動」を御覧下さい。)
学校給食に携わる皆様向けの講演会も、何度か、させて頂いておりますが、実際に給食室の中に入り、御指導させて頂くのは、今回が初めてでした。
まずは、「給食の現状」を見学させて頂いたのですが、給食室に入らせて頂くことで「見えてきたもの」が沢山ありました。
「地産地消が理想」とは、誰もが思うことですが、現状では、輸入の冷凍食材や、出来合いの加工食品、化学調味料、缶詰等も使わざるを得ないことに気付きました。
その理由としましては、まず、「コストの問題」があります。各自治体により、多少の差は、あるようですが、南房総市の場合には、小学校で、1食あたり、なんと220円の予算しかないのです。
牛乳が1パック50円位で、必ず付けなければいけないそうですので、それを差し引いた170円で、主食とおかず2品、デザート(又はフルーツ)を作らなければならないのです。これは、至難のワザ、本当にビックリです!
「調理時間の問題」もあります。番組内で、若い栄養士さんとの打ち合わせの場面が出てきましたが、私が「前の日から、出汁や野菜の下ごしらえ等、しっかりと準備して・・・・。」と申しますと、強い口調で「それは出来ません!」と、一蹴されてしまうシーンがありました(笑)。乾物の豆を前日から水に浸けて戻すこともダメだそうで、輸入物の、添加物の入った豆の缶詰を使っている現状は、如何なものかと思いますね。
岩井小学校の場合は、まだ、敷地内に給食室がある、数少ない「自校給食」ですので、食材の搬入が8時半頃にあり、9時頃から調理を開始しますと、2時間半位は、調理に費やせますが、外部からデリバリーして来る「センター給食」の場合には、輸送時間が差し引かれますので、1時間半から2時間弱で、すべてを完成させなければなりません。
このような状況での大量調理では、地元の、新鮮で栄養価の高い食材を使いたくても、なかなか、その下拵えに時間をかけられないことに歯がゆさを感じているのは、私だけではないと思います。
その他には「調理設備の問題」もあります。基本的には、大きな「お釜」で調理するのですが、その数が少ないために、同時進行で一気に仕上げることが出来ません。1つ1つの工程が終わるまで、気長に「お釜」の順番待ちをしなくてはならないのも、「大量調理の難しさ」ですね。それこそ、「お釜」を使う順番を間違えたら、とても時間内に終了しませんので、綿密な調理手順の打ち合わせも必要になってきます。
いずれにしましても、学校給食の現場に携わっていらっしゃる皆様の御苦労は、並大抵のものではないことが、よく分かりました。
日頃から、こうして頑張っている皆様の努力に報いるためにも、今後に繋がり、お手本となるような「完成度の高いメニュー」を、私が考えなくてはいけません。心の奥底から、「やる気」がみなぎってきました(笑)。
給食時間が始まりますと、全クラスを回り、子供達の食べている様子を見させて頂きましたが、とても美味しい「根菜類の煮物」や、「野菜料理」を食べる前からお鍋に戻しに来る子供達が多いことに驚きました。
このあたりのシーンも番組内で紹介されましたが、私が子供達に理由を尋ねますと「美味しくないから!」と、即答されたのが印象的でした。これは、早く何とかしなくてはいけませんね(笑)。


数少ない「自校給食」を実践している、南房総市立岩井小学校です。

「学校給食」には、冷凍野菜を使わざるを得ない現状があります。

限られた時間内での大量調理は、とても大変です。

各教室では、子供達が助け合いながら盛り付けしていきます。

子供達と一緒に、楽しく給食をごちそうになりました。


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